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東洋医学の「水」とは、体内の水分の総称です。前回学んだ「血」以外の体液全てが「水」となります。
具体的には、身体の表面を潤すサラサラした水分(津)と骨や髄の周りなど、体内深くを潤す粘度の高く重たい水分(液)に分かれます。
前者には、汗、涙、鼻水、よだれなどが、後者には組織液やリンパ液が含まれます。
※東洋医学の祖・中医学では「津液」と言いますが、ここでは漢方でよく使われる「水」の表現で統一します。
「水」の材料とは
「水」の原材料は、私達が摂取した飲食物。
飲食物を脾・胃から体内に消化・吸収して作られた「水穀の精微」という栄養豊富な物質が作られる時に、分離した水分が「水」になります。
「水」の役割とは
「水」の大切な役割は、身体を潤すこと。
現代の研究成果により、人間の身体は、体重比にして、約半分から2/3程度は水分でできていると分かっています。
人間の身体の大半を成す「水」が不足すれば身体中がかさかさになり、「水」の流れが滞り停滞すると、その場所ごとに様々なトラブルが発生することになります。
更に「水」が停滞したことにより、「気」「血」を含めた全身の循環に悪影響が生じてしまいます。分かりやすいところだと、例えば身体のむくみは、「水」のめぐりが滞ったことによるトラブルです。
身体の中のそれぞれの箇所で、「水」がどんな役割を果たしているのか、具体的に確認していきましょう。
1. 内臓に栄養や水分を与える:|「水」の役割
「水」は人間の身体の奥深く、「肝(肝臓)」「心(心臓)」「脾(脾臓)」「肺」「腎(腎臓)」といった五臓六腑に水分や栄養を運び、潤します。
まず、胃や小腸などの消化器官で「水」を作り、その後各機関の働きを通して全身にくまなく運ばれていきます。
その中で、例えば、身体から出た老廃物を腎(じん)へと運ぶのも「水」の大切な役割です。これにより、身体に不要な老廃物が汗や尿となり排泄され、体温を調節し、健やかな身体を保ちます。
2 骨髄や脳髄を潤す:|「水」の役割
「水」は、血液を作り出す骨髄や一定の脳圧を保ち脳を守る脳髄といった髄にも水分や栄養を送り、老廃物を排出するのを助けていると考えられています。
脳髄の「水」の流れが滞ると、自律神経系にダメージを与え、認知機能にも影響を与えるという研究結果も多く発表されています。
3. 関節をなめらかにする:|「水」の役割
関節の周囲に「水」があるからこそ、関節はなめらかになり、人の身体はスムーズに動くことができています。
逆に、年を取ると、関節周りに痛みや不具合が生じて身体がスムーズに動かしづらくなるのは、「水」が減ったり、滞ったりするからではないかと考えられています。
現代の西洋医学でも明らかになった、【年を取るほどに人間の身体の中の水分量が減る】という事実からもこのことが見て取れます。
4. 「五液」を作る:|「水」の役割
「五液」とは、汗、鼻水、涙、よだれ、つばの5つ。
人間の身体の表面の「水」を表します。例えば汗をかくことで体温調節し、涙で眼球を保護するといったように、身体をすみずみまで守るためのサポートをしてくれるのが「五液」です。
また、汗は心臓、鼻水は肺、涙は肝臓、よだれは脾臓、つばは腎臓で作られ、これらの臓器がしっかり働くための役割を担っています。
5. 身体の表面を潤す:|「水」の役割
先にも述べた通り、肌や爪、髪などの身体の表面を潤してなめらかに、つややかにしてくれるのも「水」の役割です。
「水」が減ったり、流れが滞ったりすると、唇がかさかになり、顔や手の肌が荒れるので一目瞭然です。
Tips: 津血同源とは
前回学んだように、「血」も「水」と同様に、飲食物から作り出される栄養豊富な物質である「水穀の精微」を材料としています。この、同じ材料から作られる「血」と「水」はどちらも、身体中に栄養や水分を与え滋養する役割を持ちます。また、「陽」に属する「気」に対して、「血」と「水」はどちらも「陰」に属すと考えられています。
このように、「血」と「水」の互いに切り離せない深い関係性を表して「津血同源」と呼びます。
「水」のまとめ
今回の『オンライン東洋医学講座7-3:東洋医学の「水」とは』のまとめです。
「水」は身体中をめぐり、水分や栄養を運び潤す液体です。
「水」が不足すると、身体中が乾きかさかさになります。
「水」が不足すると、関節がぎくしゃくして動きづらくなります。
「水」が滞ると、身体がむくんだり、身体のあちこちの臓器でトラブルが発生します。
「水」は「気」「血」とも深く関連し、流れが滞ると全身の「気」「血」のめぐりにも影響を与えます。
次回のオンライン東洋医学講座では、人の身体の組織や器官をつくるもとになるエネルギー源「精」を学んでいきましょう。今後、「水」の量や状態に何らかの不調が生じると、心身の健康にどう作用するか、どう調整して健康な身体を取り戻していくかの実践的な方法もご紹介しますのでお楽しみに!
全30回:オンライン東洋医学講座
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