易は、宇宙に存在するあらゆるモノとコトの変化をひも解き、「真理」を追究する学問です。

「真理」とは、水が高みから低みへ流れるような、合理的で自然な筋道のこと。易学は、誰の人生にも必ず訪れる変化を、いち早く感じ取り、その背後にある「真理」を見通す立体的な視野を培います。

現在、広く知られている易は、中国の古典『易経えききょう』がベースになり、思想・哲学の書としてだけではなく、政治や経済、占いの知恵を得るためにも使われてきました。
『論語』で知られる中国の思想家・孔子は、易の文書のとじ紐が3度も切れてしまうほど易を繰り返し愛読し、作成にも携わったことで知られています。

易は変化の書:変易

深い智慧のバトンタッチ|易学講座:望永航史
易経は “The Book of Changes” の英訳で、英語圏でも広く親しまれています。ものごとの変化の道理や変化の様式について、 先祖代々の偉人賢人が膨大な時間を費やして編み上げた深い智慧のバトンを、新しい時代の人々が受け継いで更に解釈を深め、更新されている、変わり続けるプログラムです。

学問や道といえば、いつか誰かが決めた決まりきったものを覚える・学ぶというイメージがありますが、易では例えば

 あなたの家庭は今どういう段階にいるのか?

 あなたが昨日会社で失敗した理由は?これからどうすべきか?

 AIとどう向き合うべきか?これから世界はどう変わるのか?

と言う具合に、あなたの知りたいことを、今現在起きている事象を基に考察していくことができるのです。
このように、すでにある知識や経験だけでなく、現在の状況や新しい技術を含めたあらゆる智慧を結集させることができるのは、変化を尊ぶからに他なりません。

易の深い智慧を身に付けた時、変化は面倒な恐ろしいものではなく、生き生きと喜びに満ちたものになるでしょう。

易は不朽の真理:不易

複眼的な思考|易学講座:望永航史

易の考えは前述の「変易」のように変化を尊びますが、根本には決して揺らがず変わらない不変不朽の真理があります。

例えば、毎朝日は昇り、夕刻には沈み、春夏秋冬の季節は変わらず訪れます。
人の身体の細胞は日々入れ替わりますが、ある日を境に別の生命体に変わってしまうこともないでしょう。
易は、そのように決して変わらないこと・そしてその背後にある真理を理解します。

「変易」と「不易」は一見対立した概念に見えるかもしれませんが、どちらを欠いてもうまく機能しません。
よく似た話では、江戸時代の俳諧論『去来抄』では、松尾芭蕉が会得した概念として、「不易」と「流行」は本来は同じものだと語っています。

このように、物事を多面的・立体的に捉えるのも易の特長です。学ぶ中で、パズルのピースがぴたりとはまるような楽しさを感じられるかもしれません。

易はシンプル:易簡

易はシンプル|易学講座:望永航史
「不易」の項とも通じますが、刻々と変化する宇宙の動きには、明瞭でシンプルな法則性があります。
その法則性を分かりやすく示すのが易の「易簡いかん」です。

例えば、デザイナー家具のすっきりとした無駄のない美しさを想像してみてください。骨組みのしっかりしたものに余分な機能や飾り付けはいらないのです。

易の中でまず初めてに学ぶ最も重要な二つのかたちであるけん」と「こんは、ものごとがいかにシンプルなのかをありありと見せてくれます。
易は、変化と不朽の真理から一定の法則性を見出すことにより、真理に近づきます。

もっと深く学びたい方は、ぜひ易学マスター講座  を受講してみてください。体験レッスンもご用意しています。

ここからは、易がどのように成り立っているのか、実際の仕組みを見ていきましょう。

易の仕組み

『周易』繋辞上伝11章

 易有太極
是生両儀
両儀生四象
四象生八卦 

易に太極有り。
これ両儀を生じ、
両儀は四象を生じ、
四象は八卦を生ず。

「易経」では、易がどのように成り立っているかをはっきりと説明しています。上記の引用と以下の図は、太極→両儀(陰陽)→四象→八卦→六十四卦という流れを経て物事が生じてゆく仕組みを述べています。

伏羲先天八卦の生成図|易の仕組み

伏羲先天八卦の生成図
(Philoloさんの厚意により掲載 from Wikimedia)

このように、太極の中にある両儀(陰陽)の要素に注目し、それらを4象、8卦と細分化し、最終的には64の卦で、宇宙の全てのモノ、コトの真理を追求する仕組みです。これら全てのモノ、コトを「天地人三才の道」とし、そこには、あらゆる自然現象、社会問題、あなたの個人的な悩みに至るまで全てが余すことなく網羅されています。まずは太極から一つずつ見ていきましょう。

太極

太極とは、宇宙が存在する前からあり続ける「宇宙の根源」です。

「宇宙の根源」とは言い換えれば、「全て」です。易の根底にある思想の一つに、「全ては一つである」という一元論が挙げられますが、この「太極」の中にどの様な要素が生じ、それらがどう影響し合い、どうバランスを取り、どう消え行くのか、その変化に法則性を見出し、全てのモノ、コトの真理を追求してゆきます。

「太極」について、ここですぐにピンと来なかったとしても、大丈夫です。
読み進めれば次第に理解が深まるので、ここでは概念の1つだと理解しておく程度で問題ありません。

太極の次に生まれるのが両儀(陰陽)です。

両儀(陰陽)

陰陽太極図|望永航史

陰陽太極図

両儀(陰陽)とは、モノ、コトの性質や状態といった要素であり、あらゆる対立、相対を表す概念です。
簡単に言えば陽は「強」や「動」の積極性を、陰は「柔」や「静」の消極性を表します。表裏、昼夜、男女といったあらゆる存在にもその分類が適用されます。

<陰陽対照表>

「柔」「静」「消極的」 「強」「動」「積極的」
太陽
冬(秋) 夏(春)
植物 動物
体内/腹 体表・背中
六腑(胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦) 五臓(肝・心・脾・肺・腎)
女/妻 男/夫
子供
空間 時間
液体 個体
上昇・拡散 下降・融合

陰陽は太極が二つに分かれるのではなく、太極が内包する二つの側面であり、その時々の状態を表します。

よく勘違いされがちですが、陽が良く、陰が良くないものという捉え方は誤りです。また、固定化された役割を意味するのでもありません

例えば同じ一日でも昼は陽ですが、夜になれば陰です。あなたの母親はあなたとの関係性では陽で、夫に対すれば陰です。また、陽性の『活発な人』にも、陰にあたる静かに物想う瞬間があるでしょう。

 あらゆるモノ・コトは時に陰の要素を増し、時に陽の要素を増して絶え間なく変わり続け、反発し、引きつけあい、混ざり合い、エネルギーを発しながら一つ太極の中で調和してバランスを保っている。 
この陰陽の捉え方が易の根本概念であり、これにより世界のあらゆるモノ、コトの存在、生成、変化を説明しています。

陰陽思想は古代中国で生まれ、中国の文化に大きな影響を与えました。中医学も、気功も、太極拳も、易学も、全て陰陽思想に多大な影響を受けています。

陰陽から四象、八卦、六十四卦

前項「両儀(陰陽)」で、陰陽は固定化された役割でなく、状態であり、一つのモノ、コトの中に同時に陰陽が存在しうると述べました。これらを、より繊細に分類する為に作られたのが四象です。

これにより、例えば一年を夏(春)は陽、冬(秋)は陰という分類しかできなかったところが、春・夏・秋・冬の四季を分類できるようになります。

このようにして、太極→両儀(陰陽)→四象→八卦→六十四卦と更に繊細なカテゴライズをすることにより、六十四の卦が出来ました。

六十四卦を実際に見てみよう

では、この六十四卦は実際にはどんなものなのか、例を挙げて見てみましょう。
以下は、「山水蒙さんすいもう」という、六十四卦の中の四番目の卦です。

山水蒙さんすいもう

山水蒙|dr.mochinagaの易学講座

【周易序卦伝】
物生ずれば必ずもうなり。故に之を受くるに蒙を以ってす。蒙とは蒙きくらきなり。物のおさなきなり。

易経は、当初、上の図の線符号だけで成り立ち、後に、その下に出てくるような解説が徐々に加えられました。

象形文字にも通じることですが、言語ではないからこそ、固定観念に結びつくことを免れ、長い歴史の中で各々が、この符号にどんな意味が込められているのかと想像をめぐらせ、解釈され続けることができたのかもしれません。
各卦の符号(卦)が何を模し、どんな意味が込められているか、今の時代にあなたはどう理解するか想像力を働かせて読んでみるとまた楽しいですよ。

  書は言を尽くさず、言は意を尽くさず。然らば則ち聖人の意は、其れ見る可からずか  

現代語訳:文字では言葉を書き尽くすことはできないし、言葉は思いを言い尽くすことはできない。それならば、聖人の真意を見ることはできないのだろうか。
(『易経』繋辞伝より)

六十四の卦をどう捉えるか

このようにしてできた六十四卦には、一般的に「良い卦」と言われる卦と「悪い卦」と言われる卦があります。占いでもここをフィーチャーする傾向があるようです。
でも、実際に見るべきはその卦の良し悪しではなく、その卦が他の六十三卦に変ずる可能性を常に秘めているということです。つまり、少なくとも64×64=4096通り(足りなければ、更に×64×64×64…)の可能性が易によって、より立体的に見えてくるのです。

易の仕組みは、実人生を通して学ぶことができるので、とても楽しいですよ。ぜひ体験レッスンから受けてみてください。

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