中医学とは
中医学とは、2,000年以上前に中国で生まれた伝統医学を指します。
日本で「東洋医学」として知られている漢方薬や鍼・灸、あん摩などの手技治療は、中医学の医療技術です。
この道40年の専門家・望永航史が、中医学の基本をご紹介します。
中医学の健康観
中医学では、身体は常に変化していると捉えています。
気候や生活環境の変化、対人関係や体質の変化など、体内外の変化は当然のもので、その変化の中でバランスを取ることが「健康」です。
バランスが乱れて病が生じた場合、その病巣を治療したり排除したりするのではなく、病巣と関連する部位を治療し、全身の気血のバランスを整えて身体全体をより良くしていくことを優先します。
自然治癒力でバランスを取ることが難しくなれば、鍼灸治療や漢方薬、手技医療などで治療を行うこともあります。
中医学において、誰もに共通する「規範的な健康」はありません。
一人ひとりの体質や状態に併せたいわば「オーダーメイドの治療」を行うことができるのです。
中医学の特徴と、西洋医学との違い
中医学は、身体全体のバランスを整えて自然治癒力を引き出し、身体を根本から良くすることを目指します。
西洋医学では病名のつかない不定愁訴や未病を改善することにも長けています。
現代の西洋医学と比較すると、明確な違いを見て取ることができます。
中国伝統医学 | 近代西洋医学 |
「人」を診る | 「患部」を診る |
心身全体のバランスを良くする | 患部を重点的に治す |
緩やかにじっくり治す | 緊急性の高い症状にも対応できる |
「経験値」を尊ぶ | 「論理」を尊ぶ |
「主観的」訴えから判断 | 「客観的」データから判断 |
個々人で正常なバランスを求める | 一般的な正常値が設定されている |
不定愁訴や未病も治療の対象 | 原因不明な症状は治療対象外にするケースが多い |
薬は自然由来の漢方薬で緩やかに効くものが多く、副作用が少ない | 主に単一成分から合成された西洋薬で、速効性・顕著な効果があるが、副作用のリスクが高い |
鍼灸や推拿なども正当な医療 | 「科学的」に有効性が裏付けられた医療以外は代替医療 |
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中医学の養生法(病との向き合い方)
中医学において、病は全身のバランスの乱れが原因で起こると考えています。
1、外因
気候の変化などの身体の外の環境によって発生した病因を外因と言います。
四季の気候の変化は「風(ふう)」「寒(かん)」「暑(しょ)」「湿(しつ)」「燥(そう)」「火(か)」の六気に分類されますが、その変化があまりに著しいと、六気は六邪に転化し、外因になってしまいます。
また、全身のバランスが乱れていると、六邪に転化するリスクが高まります。
風 風邪(ふうじゃ):風が吹くように、急に発病したり患部が移動したりする。頭痛、のどの痛み、めまいなど身体の上部に症状が出やすい。春によく見られる。
寒 寒邪(かんじゃ):呼吸器や皮膚から侵入した冷えが身体の陽気を衰えさせる。寒気や下痢、関節の痛みなど。気温の低い時期に見られる。
暑 暑邪(しょじゃ):暑さが身体の熱を上げ、大量の発汗・水分不足を引き起こす。同時に気も奪われて脱力感を招くことも。真夏を中心に見られる。
湿 湿邪(しつじゃ):湿気が体内に侵入し、臓腑や経路を詰まらせる。下痢、むくみ、頭重感など、湿気には「濁る・粘る」特性があるため、症状も長引きやすい。梅雨や夏など湿気の多い季節・地域で見られる。
燥 燥邪(そうじゃ):乾燥により肌、口などが乾き、肺機能が低下する。乾燥肌や空咳、胸の痛みなどの症状が出る。秋から冬に出やすい。
火 火邪(かじゃ):季節に関係なく、他の邪気が溜まり熱化したもの。火が燃え上がるような急な発熱や全身の乾燥などを招く。
2、内因
身体の内側・つまり感情から生じる病因を内因といいます。
内因には、「喜・怒・思・悲・憂・恐・驚」の7つがあり、これらを併せて「七情(しちじょう)」といいます。
行き過ぎてバランスを失した感情は、五臓六腑や気血を乱し、身体全体のバランスを崩させる原因となります。
それぞれの感情には、関連する臓腑があります。「陰陽五行(準備中)」のページで分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
3、不内外因
外因にも内因にも分類できない病因を不内外因といいます。
例えば、食べ過ぎ・飲み過ぎ、睡眠不足/睡眠過多、偏食など生活習慣はこれに当たり、更に細かく見れば、「目の使い過ぎ(久視)」「歩き過ぎ(久行)」なども含まれます。
どれも、「・・過ぎ」「・・不足」「・・の偏り」など、バランスを失した行動であることからも、中医学がいかにバランスを整えることを尊ぶかお分かりいただけると思います。
季節に応じた養生法
健康は、自分自身で自律的に作っていくものです。健康を目指す心身の土台を作ることに関して言えば、中医学に勝るものはありません。
ここからは、具体的に毎日の生活のなかでバランスを取るための養生法をご紹介しましょう。
春の養生法
春の特徴と養生法
春になると、植物が芽吹き、地下に潜っていた動物も地上に姿を表すように、万物はエネルギーを発散しながら上へ、上へと上昇し、自然界は生命力に満ち溢れています。なるべく早起きをし、外に出て散歩する時間を持ちましょう。自然の伸びやかな「生気」に乗る事が健康の秘訣です。
春の五臓六腑
春は気が上へ上へと上るため、上半身・特に頭部に気血が集中する傾向があります。「頭に血がのぼる」という慣用句が示す様にイライラや怒りの感情が引き出されがちです。度を超した怒りは「肝」を傷つけ、目や筋、爪の異常や頭痛、自律神経失調などの原因となります。春は肝をいたわることでこれらの症状も収まるかもしれません。
夏の養生法
夏の特徴と養生法
夏になると、陰陽の両気が充実し、太陽が照りつけ、万物は勢いを増してすくすく伸びやかに成長し、花を咲かせます。この陽気に乗り、早起きし、身体を気持ちよく動かしてエネルギーをたっぷり使うことで、身体の気血の流れが良くなり、心も充実します。
夏の五臓六腑
夏は充実したエネルギーに乗じて、体温が上がり気が満ち溢れ、感情の起伏が大きくなりがちで、特に喜びを感じる機会が増えるかもしれません。プラスのイメージがある喜びも度を超せば「心」を傷つけ、動悸・ 息切れ、不眠などの原因となります。
同じ夏でも季節の変わり目を中心とする湿気の多いじめじめした時期には、気の巡りが悪くなり、身体がだるく、思い悩みやすくなります。「脾・胃」を滋養してあげましょう。
秋の養生法
秋の特徴と養生法
秋には、陰の気が徐々に強まって、暑さが収まり乾燥した大気のもと、万物が成熟し、実を結びます。春・夏の成長の勢いは失くなり、調整を始めます。秋は季節の変化が急なので、冷えと乾燥に特に注意し、内面・外面の観察力を研ぎ澄まして変化に対応できる柔らかな心と身体を作りましょう。
秋の五臓六腑
昔から肺病を患う悲劇のヒロインがドラマや小説で描かれてきましたが、中医学の七傷七情理論で肺は悲しみ・憂いの感情と結びついています。秋は乾燥・冷えに用心して肺を滋養してあげましょう。
冬の養生法
冬の特徴と養生法
冬、大地は冷え、水は凍り、動物たちはエネルギーを蓄えるべく冬眠します。万物がひっそりと内側にこもるこの季節は「潜蔵」と表現されます。人も心身の気を鎮め、活動を控えめにして様々な思いを、来たる活動の時に向けてじっくり育てましょう。
冬の五臓六腑
エネルギーを蓄え春に備える冬の時期に注目するのは、生命力を蓄える役割を持つ「腎」です。腎の機能が低下すると、生殖機能が衰え、不妊や更年期障害、老化現象を招き思考力を低下させます。驚きや恐れのような急な感情の変化により余分なエネルギーを消費しないよう、穏やかな気持ちで過ごすよう心がけましょう。
中医学の可能性
中医学をはじめとした伝統医学は、長らく「科学的でない」という評価を受けてきましたが、最近では、鍼灸や漢方などを始めとした各分野で科学的な証明が提示され、WHO(世界保健機関)が「国際疾病分類(ICD)」に、伝統医療を認定する方針を発表するなどの流れを受け、治療に取り入れる医療機関が増えています。また、現在日進月歩で進歩する量子力学は、「気」の存在を証明する論拠になるでしょう。
これは、中医学が進歩したのではなく、科学技術の進歩により、その効果が証明できるようになったものだと考えられますが、いずれにしても、今後、健康管理やあらゆる病気の治療に、中医学が取り入れられていくでしょう。
中医学は、個々人が日々の生活に簡単に取り入れることができます。あらゆる情報が手に入る現代において、西洋医学・中医学両方の知識を得ることは、ご自身やご家族など周りの方の心身の健康の大きな助けになるはずです。今後、本ホームページから様々な知識を分かりやすくご紹介してきますので、ぜひご活用ください。
また、ご自身や周りの方の健康管理に生涯役立つ基礎知識や養生に最適な気功法を丁寧にご案内しますので、お近くの方はぜひレッスンにいらしてください。
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